樹状細胞は、がん細胞の情報を T 細胞に伝える「司令塔」の役割を持つ免疫細胞です。この治療では、樹状細胞にがんの目印(がん抗原)を認識させて体内に戻し、T 細胞に攻撃対象を認識させます。これにより、T 細胞にがん細胞特異的な攻撃を促します。がんの目印(がん抗原)にはネオアンチゲンと次項のオンコアンチゲンの2種類があります。
ネオアンチゲンワクチン療法は、患者さん自身の腫瘍(手術標本など)を用いてゲノム解析を行い、患者さんのがんごとに最適な抗原(ネオアンチゲン)を特定し、そのネオアンチゲンを樹状細胞に認識させてワクチンを行い T 細胞にがん細胞特異的な攻撃を促す治療です。解析から治療まで段階的に進めるオーダーメイドの免疫治療です。
大西秀哉院長の論文を参照:Onishi H, Higa A, et al. Neoantigen dendritic cell vaccination combined with conventional chemotherapy for a patient with advanced transverse colon cancer. J Surg Case Rep. 2026;2026(1):rjaf1030.
大西秀哉.樹状細胞を用いたネオアンチゲンワクチン療法.ファルマシア.2025;61(5):413-417.

ネオアンチゲン解析ができない方は、オンコアンチゲンを用いた樹状細胞ワクチンを行うことができます。WT1 や MUC1 といったペプチド(オンコアンチゲン)は多くのがん腫で共通して発現していることが確認されています。それらペプチドを用いて樹状細胞にがん抗原を認識させてワクチンを行い T 細胞にがん細胞特異的な攻撃を促す治療です。
T 細胞(αβT 細胞)は、免疫反応の中心として異物を排除する重要な細胞です。本治療では、患者さんの血液から T 細胞を取り出し、培養・増殖させて活性化した後に体内へ戻します。
T 細胞は T 細胞受容体でがん細胞の MHC class I 抗原を認識して抗原特異的にがん細胞を殺傷します。NK 細胞とは異なる仕組みでがん細胞を攻撃し、相互に補完し合いながら作用します。これにより抗腫瘍効果を高め、腫瘍の縮小、再発や転移の抑制を目指します。

NK 細胞は、体内でがん細胞やウイルスなどの異物を見つけて攻撃する免疫細胞です。この治療では、患者さんの血液から NK 細胞を取り出し、培養・増殖させて活性化した後に体内へ戻します。NK 細胞は NKG2D 受容体など T 細胞受容体以外の受容体でがん細胞の MICA/B などを認識して抗原非特異的にがん細胞を殺傷します。本療法で腫瘍の縮小や再発・転移の抑制を目指します。
γδT 細胞は、T 細胞受容体と NK 細胞に特徴的な NKG2D 受容体を併せ持つ特殊な T 細胞で、細胞数自体は少ないですが強いがん細胞殺傷能力があると考えられています。この治療では、γδT 細胞を培養によって増やし、さらに活性化して体内に戻します。通常の T 細胞とは異なり、樹状細胞の指示を必要とせずがん細胞を認識することができるため、MHC class I 抗原を消失させ T 細胞から逃避しているがん細胞にも有効と考えられます。
アフェレシスとは、専用の装置を用いて血液を体外に循環させ、血液中から必要な細胞や成分を選択的に 採取する方法です。採取したい細胞や成分を分離した後、それ以外の血液成分は体内に戻します。
当院では、免疫細胞を用いた治療に必要な細胞を採取するために、アフェレシスを実施しています。
この方法で、一度に複数回の治療に使用する細胞を確保することができます。
採取した細胞は、所定の手順に従って細胞の培養・調製工程へと進みます。
採取にかかる時間は人により様々ですが、採取中は医療スタッフが患者様の体調を確認しながら安全に実施します。
高濃度ビタミンC 点滴療法は、高濃度のビタミン C を静脈から投与し、生じる活性酸素により抗腫瘍効果を期待する治療法です。正常細胞への影響はほとんどないため、体への負担が少ないとされ、患者さんの状態に応じて他の治療と併用されることがあります。